税ではなく、国債を財源に!

はじめに 

 

「税を財源に国民みんなに現金給付すると、いずれ、その分の税金を払わなければならないのではないか」 

 

「税収には限りがあるから、税を財源に何かを実現することは、何かをあきらめることになるのでは。たとえば、現金給付と消費税5%ないしゼロは一緒に実現できないのでは」 

 

そんな風に考えている人には、 

 

「国債をどんどん発行して、それを財源に国民みんなに現金給付すれば、あとでその分の税金を払う必要もないし、現金給付を消費税5%ないしゼロと一緒に実現できるし、更に休業補償や中小企業支援やイベント補償などとも一緒に実現できますよ。悪性(ハイパー)インフレにならない限りはね」 

 

と言ってあげます。 

 

すると、 

 

① 「国債をどんどん発行すると悪性(ハイパー)インフレになる』って偉い人が言ってたけど、どんどん発行しても、必ずしも、悪性(ハイパー)インフレにはならないってことなの?」 

 

②「『国債をどんどん発行すると返済不能の借金になって、日本が破綻する』って別の偉い人は言っていたけど、大丈夫なの?」 

③「『国債をどんどん発行すると、日本円及び国債そのものの信認をそこなう』って言う偉い人もいたけど、大丈夫なの?」

 

と聞かれたりします。①②③はいずれも長い間喧伝流布されつづけてきたことで、

今の危機的状況にあっても、多くの人々がそれらに呪縛され続けているのではないか、

この呪縛がゆえに、そもそも国債を財源にする選択肢そのものが思い浮かばない方もいらっしゃるのではないか、

と思いますが、

それらの呪縛は、少なくとも国債を財源に国民のふところがあったかくなり消費が増え景気=実体経済が上向きになるような政策を行う場合には、根拠がないと思うので、

以下のように、①②③について反論することによってその呪縛を解きたいと思います。ご一読いただければ幸いです。(2020年4月 荒井潤) 

①「国債をどんどん発行すると悪性(ハイパー)インフレになる」の呪縛を解こう!

Change.Orgの署名キャンペーンの呼びかけ文中に書きましたように、総額25.2兆円の国債を発行して、それを財源に全ての国民一人一人に20万円ずつ配っても、消費者物価押し上げ効果は0.05ポイントにとどまり、インフレ目標の2%には遠く届きません。その場合の消費者物価押し上げ効果は0.05%なので、国民全員に何回か20万円ずつ配っても悪性(ハイパー)インフレにはならないでしょう。

もう一つ、大事なポイントがあります。

一般的に、国債を財源にして、あかちゃんも含めた国民全員に現金を配ると、国民全員の所得が増え、消費は増え、景気は回復し、給料もあがります。

その場合、みんながより多くのお金を使うようになった結果物価が上がったとしても、その物価上昇率よりも所得(配られた現金+給料)の上昇率が上回る可能性(=実質物価上昇率がマイナスになる可能性)が大きいでしょう。

ちなみに、このリンクにあるように、1965-1979年(高度成長期及びそのあと7年ほど)の日本では、給料の上昇率が物価上昇率を上回り、実質物価上昇率はどの年度もマイナスでした。(1980年及び1981年は多少プラスでしたが、前者はプラス1.4%、後者は0.4%にとどまりました。)

オイルショックに起因する「狂乱物価」の1974年でさえ、実質物価上昇率はマイナス4%でした。


実質物価上昇率がマイナスの状態=実質所得上昇率がプラスの状態であり、そういう状態においては一般国民は景気が上向きであることを実感でき、実際に、景気=実体経済も上向き状態にあると言えるでしょう。

景気=実体経済が上向きなら、それは世界からもよい経済状態だと信認され、実体経済に裏打ちされる日本円及び日本国債の信認度も、景気=実体経済が上向きな分だけ、増すでしょう。


②「国債をどんどん発行すると返済不能の借金になって、日本が破綻する」の呪縛を解こう!

個人の借金はしばしば破綻します。返済期限が来ても返済できず、破綻するパターンです。

同様のパターンで、国債をどんどん発行すると日本政府は返済不能になって破綻するのでしょうか?

http://www.garbagenews.net/archives/2126503.html

によれば、2019年時点での、残高1037.4兆円の日本の国債(長期国債)の7.6%は海外投資家が保有しで、残りの92.4%は国内の保有者(債権者)が保有していました。

国内の保有者は日本経済の破綻をもたらすような返済を日本政府に迫ることはできず、満期になった国債の書き換えに応じないということはありません。彼らは日本経済と運命を共にしているからです。

では、海外投資家は、日本を破綻させることができるでしょうか。最後のそして最大の買い手である日本銀行を相手にして、彼らは何度も売り浴びせ(空売り)を仕掛けながら勝てたことはなく、それはこれからもそうでしょう。日本銀行は、国民の貯蓄とは一切無関係に、それに一切手をつけることなく、買い資金を作ることができるからです。

国内の保有者であれ海外の投資家であれ保有しているのはすべて円建ての国債です。日本銀行は円を無制限に発行する権利を持っています(通貨発行権と言います)から、円建ての国債を円に替えて欲しいと要求してきても日銀は全く問題無く円を発行して要求に応じることができます。

国債を財源にして得たお金を、従来のようにマネーゲームや企業の内部蓄積に流すのでなく、今回の緊急提言やその延長線上で一般国民のふところをあったかくしてその結果消費を増やし景気=実体経済が上向きになるように使った場合、日本円と同様に実体経済に信認のベースを置く日本国債の格付けが下がることはなく、その意味で国債の金利が過度に上昇することはないでしょう。

日本銀行は2019年時点で全体の46.8%、485.5兆円の国債を保有しており、日本政府は日本銀行にその分の利息を支払っています。

しかし、

日本銀行が得た最終的な利益、すなわち、所要の経費や税金を支払った後の当期剰余金は、準備金や出資者への配当に充当されるものを除き、国民の財産として、国庫に納付されます(日本銀行法第53条)。

これを国庫納付金といいますが、日銀が受け取った利息の大部分も国庫納付金として政府に納付されるので、

国債を財源にして生み出したお金を、国民のふところをあったかくし消費を増やし景気=実体経済を上向きにするように使えば、税収が増えて、(日本銀行が受け取る利息-国庫納付金としての利息返還分)を賄うことは十分に可能です。

言い換えれば、政府が日本銀行に(日本銀行が受け取る利息-国庫納付金としての利息返還分)を支払う損より、日本国民及び政府が得る得の方が大きくなるということです。

今後、政府が発行した国債を日本銀行がどんどん買い、同行の国債保有率が100%になったとしても、

政府が国債を財源に得たお金を、国民のふところをあったかくし消費を増やし景気=実体経済を上向きにするように使うなら、

実体経済の状況に裏打ちされる日本円の信認度はそれが上向きになった分だけ高まり、

同様に実体経済の状況に裏打ちされる日本円の信認度もそれが上向きになった分だけ高まり、格付けが下がったり金利が悪い意味で上昇したりすることはないでしょう。

③「国債をどんどん発行すると、日本円及び国債そのものの信認を損なう」の呪縛を解こう!

すでに上に記したことの繰り返しになりますが、

国債を財源にして得たお金を、従来のようにマネーゲームや企業の内部蓄積に流すのでなく、今回の緊急提言やその延長線上で一般国民のふところをあったかくしてその結果消費を増やし景気=実体経済が上向きになるように使った場合、日本円と同様に実体経済に信認のベースを置く日本国債の格付けが下がることはなく、その意味で国債の金利が過度に上昇することはないでしょう。

実体経済の上向きの度合いに応じた健全な(=税収増によって支払い可能な)金利の上昇はあっても・・・。

むすび

国債をどんどん発行して作ったお金を、

マネーゲームや企業の内部蓄積に流すような形で使うパターンではなく、

国民みんなのふところをあったかくし消費を増やし景気=実体経済を上向きにするために使うパターン(現金給付、ユニバーサルベーシックインカム、国民配当)なら、

①②③は解き放たれるべき根拠のない呪縛だと言えるでしょう。

補足1  ①②③のような根拠のない呪縛が長い間喧伝流布されてきたのはなぜ?

なぜ①②③のような根拠のない呪縛が長い間喧伝流布されてきたのかについて、考えられる理由を記します。

考えられる理由:財務官僚や彼らと結託した政治家や大企業がが自分たちの権力を守るためでは。

 

限りある税に基づく国家予算を配分する権限があるからこそ、財務官僚は大きな権力を持ち、天下り先の確保も思いのままにできます。大企業や政治家たちも、自身の権力維持・拡大のために財務官僚とどっぷりつるんできています。財務官僚は政治家になったり大企業に天下りしたりしています。

 

しかし、国債を財源にすれば悪性インフレにならない限り無制限に国家予算を増やせて、その配分も政治家が行えるようになるので、「限りある税に基づく国家予算を配分する権限」をベースに保ってきた財務官僚やお仲間の政治家や大企業の権力はその分空洞化するでしょう。

 

そうなるのは困るから、彼らはこれまでずっと①②③のようなことを喧伝流布してきたのでしょうし、日々どんどん深まりゆく現在の危機に際してもまだ、

 

国債を財源に新型コロナ不況対策を行うこと、

 

国債を財源に一般国民が安心できるレベルの十分な生活防衛を実現するために「【消費税ゼロないし5%】も【現金給付】も【休業補償】も【中小企業補償】などもすべて一緒に実現する」こと、

 

に反対ないし消極的なのだと思っています。それを行えばみんなが安心してお金を使い、その結果、景気回復も実現できるのに・・・。

もちろん、彼らが「自分たち少数の人間だけがこの国の主役であって、一般国民などはほんの付けたしにすぎず、税金はできるだけもらっても、君たち一般国民にはできるだけ使わないつもりだ。だから、君たちの生活防衛は君たちで、自己責任でやりなさい」などという風に考えているからでもあると思っています。この国は本来国民が主役の民主主義国家であるにもかかわらず。

また、国債を財源に一般国民の所得が増え、消費が増え、景気がよくなるとインフレになります。それがよいインフレであっても、お金の価値は下がるので、資産家や巨額の内部蓄積を抱える大企業、特にマネーゲームで富を得たそれら、にとっては資産や内部直積が目減りすることとなります。それがいやで、国債を財源に国民の所得が増え、消費が増え、景気がよくなるような政策を行うことを、そういった人たちやその仲間たち(政治家や財務省の官僚の中にも仲間はいるでしょう)は抑えてきたのではないかとも考えています。

「異次元の量的(金融)緩和」は、国債を日銀が買って世の中のお金を増やす政策ではありましたが、そのお金は一般国民の所得が増え、消費が増え、景気がよくなるようには全く使われませんでした。実体経済の回復が見通せない中で、日銀が潤沢なお金を供給したために、それは流れるとしても、一般国民のふところではなく、金融市場や不動産市場などのマネーゲームに流れ込むしかなかったことは、賢い人たちには最初から分かっていたのではないでしょうか。




補足2  実は、銀行は新規国債をゼロ円で買ってきている。

なお、日本政府が発行した新規国債を民間の銀行が買うとき、国民の預貯金で買っているわけでは全くないどころか、ゼロ円でそれを買っています。以下、やや面倒な説明になりますが、ご興味のある方はどうぞご一読ください。

 

たとえば、銀行が政府から25.2兆円の新規国債を買い、その代金として政府が得た25.2兆円がベーシックインカムに使われる場合、(説明を単純化するために、M銀行1行だけで25.2兆円の新規国債を買うことにします)、

 

①    その国債はM銀行に渡り、日銀内の、M銀行の当座預金口座から、日銀内の政府の当座預金口座に代金の25.2兆円が帳簿上移動します。

 

②    政府はその25.2兆円と同額の政府小切手を発行し、ベーシックインカムを給付する政府系BI銀行にそれを渡します。

 

③    政府小切手を受け取った政府系BI銀行は、それをM銀行に持ち込んで、政府からの25.2兆円の取り立てを依頼します。

 

④    するとM銀行は、そのM銀行にある、政府系BI銀行の口座に25.2兆円を記帳します(この25.2兆円は国民全員に20万円ずつ給付するための原資となります)が、

これは帳簿の数字上の操作で、一般国民の預貯金を取り崩して政府系BI銀行の口座に送金するわけではありません。

言い換えれば、M銀行は政府系BI銀行の口座に無から生み出した25.2兆円を記帳したわけで、それは「銀行の信用創造」とも呼ばれる、銀行の通貨発行権の行使であり、銀行の錬金術であり、

新たに生み出された25.2兆円は預金通貨と呼ばれている新規に創造された通貨であり、

M銀行に国民が預貯金したお金が政府系BI銀行に送金されたものでは全くありません。

 

⑤    そしてM銀行は政府に政府小切手を渡し、政府は日銀内の政府当座預金口座から、日銀内のM銀行の当座預金口座に、①でM銀行から移動されたのと同額の25.2兆円を移動します。結局、①と⑤において、日銀内の政府当座預金口座の残高も、日銀内のM銀行の残高も変化はありません。

このことからも、新規国債は銀行にある一般国民の預貯金で買っては全くいないことがわかると思います。

 

⑥    そして、奇妙な話に聞こえるかもしれませんが、日銀内の政府の当座預金口座の残高も国債を買ったM銀行の当座預金口座の残高も結局変わらず、

銀行は結果としてゼロ円で新規国債を購入し、

政府系BI銀行には銀行の錬金術によって生み出されたお金が25.2兆円増え、

それを原資に全ての国民に20万円が給付され、

そのことによって世の中に出回るお金が25.2兆円増える、

という結果になります。

それにしても、ゼロ円で購入できて、利息ももらえるなんてビジネスはほかにあるでしょうか。なぜ銀行が満期になった国債を現金化しないで借り換えに素直に応じてきたのかが、この点からもわかる気がします。